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2020.6.14 牧師の書斎

5日の夕方、横田滋さんが亡くなられたとテレビのテロップが流れた。早紀江さんは、滋さんが亡くなる直前に耳元で「天国で待っていて。私も行くから。私のこと忘れないで」と大きな声で叫ぶと、滋さんは薄く開けた右目の内側に涙をため静かに息を引き取った、と記者会見で語られた。「お父さんは天国へ行ったと確信している」と早紀江さんのことばが掲載されていた。

 

横田早紀江さんは、近所に住んでいたアメリカ人のマクダニエル宣教師が失踪事件のビラを作り、新潟港で配っていた1978年2月頃、マクダニエル宣教師宅の「聖書を読む会」に出席するようになった。娘の行方不明で悲しみの中にあるときに、友人からヨブ記を読むように勧められた。ヨブ記に感銘を受けて、聖書を読むようになった。五十嵐キリスト教会の礼拝に出席するようになり、後に、マクダニエル宣教師の影響を受けてクリスチャンになられた。滋さんは拉致被害者家族会を長い間代表を務められ、滋さん夫妻はその象徴的存在であった。滋さんは2017年にバプテスマを受けクリスチャンになられた。

 

「私が行くときまで、忘れないで待っていてね」と、早紀江さんが滋さんに語られた最後の言葉を聞いた時、私は教会のメンバーの老夫妻の葬儀式の最後の事を思い出す。斎場でいつくしみ深きを賛美し祈った後、米子姉妹が愛するご主人、秀吉さんの棺の傍で「天国で待っててね」と言われた。

 

一時の別れの悲しみ、辛さはあるが、また会える希望がある。復活して主イエスとお会いでき、また先に天国に行った多くの家族や友人に再会できる望みが、今を生きる大きな力になるのであるから、早紀江さんにエールを送ろう。他の拉致被害者家族のためにも祈りの手をあげよう。